Clinicafe ♯2

クリニック+カフェ 医療以外もつらつらと書きます‥‥

シェイクスピアと議会、そして選挙いきましょう!

 文豪シェイクスピアは、誕生日も命日も同じ(正確には不明)4月23日とのこと。2014年は生誕450周年、そして本年2016年は没後400周年に当たり、様々な記念行事が開催される様子。お花見も一段落したところで、たまにはこうしたイベントを覗くのも一考かもしれませんね。

 と、何事もなかったように書き出しましたが、2月にネパールの学会に行ったりしたので、恥ずかしながら久々の更新です。春になり、気をとりなおしてブログ書きます!日本整形外科学会ニュースの原稿のロングバージョンなので、整形関係の方はよろしければお読み比べください。

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 ウィリアム・シェイクスピア没後400年にあたる本年は、世界各地で記念行事が催される。演劇、映画、展覧会といったプログラムのみならず、国や時代を超えて読み継がれている作品を、世界の子どもの教育に役立てようという企画もあるようだ。数々の作品は人間観察・描写が豊かで今なお新鮮だが、本人の人物像については謎が多く、複数人である説もある。今から数年前、シェイクスピア自身が脱税の疑いで起訴されて投獄寸前だったとの調査結果も発表された。作品中にも、当時の不動産相続や課税に言及する台詞が多く出てくるようだ。
 さて、四大悲劇の1つ「マクベス」は、1605年の火薬陰謀事件(国会議事堂地下に大量の火薬が運ばれるが爆発は未遂に終わった事件。首謀者の名前に由来するガイ・フォークス・ナイトは花火大会として有名)の後に書かれたが、当時エリザベス一世の時代に議会があったことにまず驚く。英国議会制度の始まりはもっと古く13世紀、市民代表が議会に選ばれるようになったのは14世紀、そして庶民院は直接税や関税についての承認権を持つようになったという。
 シェイクスピアの時代からの議会制とはいえ、一般市民が参加できるまでの道のりは遠く、普通選挙が男性に実施され始めたのは19世紀、女性においては第二次世界大戦後からという国が多い。日本においてはこれまで20歳以上だった選挙権が本年夏より18歳に引き下げられる。
 普段はあまり意識していないが、医師法、医療法、健康保険法、介護保険法など、私たち医療の仕事も法の規範に定められている。おそらく他業種においても、ちょっと調べると種々の関連法が定められていることと思う。こうした法律は議員、内閣により立案され、諸手続きを経て施行される。多くのシステムが急速に変革する現在、日々の生活が立法と無関係ではないことを再確認し、選挙・投票に真摯に参加する時期と考える。

夢の大発見と産学連携、そして難病

 目覚めたら問題が解決していた!誰しも夢見ますが、現実は厳しく、まさに前回引用した通り「The cures we want aren’t going to fall from the sky. We have to get ladders and climb up and get them.」夢のような大発見は降って湧いては来ないものです。桃栗3年柿8年、梅は酸い酸い13年(18年との説も!)ということで、昨夜の梅の写真を・・・・

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 最近しばしば聞かれる「産学連携」、ないしは「産学官連携」。私はもっと国産の医療機器を作ってほしいと(この話題はまた後日)常々話しているが、一方で、短期間での成果を研究に期待し過ぎる危険性も指摘したい。

 米国ではBayh-Dole 法(1980年)により、政府の資金援助を受けた研究成果の知的財産権が大学などにも帰属するようになった。成果を臨床応用してゆくために、大学はこの権利(パテント)を商品化して販売する力のある企業へ供与した結果、産学連携が発展した反面、産業化し易い分野に研究志向が偏る弊害もあったと聞く。発症頻度が稀な「難病」は、治療対象者が少ない=需要が低い=商業的価値がないとみなされる一面があったのだ。

 整形外科の難病には骨・軟部腫瘍、骨系統疾患が相当するが、日本整形外科学会(JOA )ではこれらの分野の研究も積極的に支援してきた。1970年代より開始された全国骨・軟部腫瘍登録は、稀少がんとして世界でも類を見ないデータとなり、またJOA による学術集会開催は50回近くにのぼる。骨系統疾患については平成元年に研究会が発足したが、途中からJOAが 主催しより多くの会員が知るところとなった。骨・軟部腫瘍、骨系統疾患ともに、基礎医学の各分野と連携し研究が進んできた。

 基礎医学といえば、産学官連携施策における研究助成のあり方に対し、2013年6月に日本生化学会、日本分子生物学会、日本免疫学会などライフサイエンス関連7学会は、「トップダウン型戦略とともに、アカデミアの自由な発想を鼓舞するボトムアップ型研究支援をより一層拡充」することが日本の未来に不可欠との緊急声明を発表している。これに関し具体例を紹介する。骨粗鬆症発症前に寿命を迎え(平均余命は50歳足らず)ていた1930年代は、国内の主たる死因は結核、肺炎であり、世界でも第二次大戦後も感染症制御が注目されていた。そうした中、先天性代謝疾患、骨代謝の基礎に従事する研究者が現われボトムアップ的に発展した結果、現在の高齢化社会に対応する骨粗鬆症治療へつながった。ある時代には産業的に地味な色合いでも、数十年を経て最先端になることがあるのだ。
 基礎研究がスピーディに臨床応用されるのは大切だが、学会が自律性を遵守して広い分野の研究をリードすることも必要である。また、幾ばくか時間がかかっても産業として成り立つ分野と、産業化しにくい難病研究・対策とでは、助成の金額や在り方をかえてゆくべき(「官」としてはむしろ後者に重点化を)ではないだろうか。

初めまして ~ アンチエイジングで120歳?

   今日は2月2日。手で示すとVが二個、あるいはピース×2。縁起がよい日ということで、ブログを始めます。

 はじめまして、東京で整形外科を開業する田中と申します。実は10年前に開業した際には書いていたのです、ブログを。医療に特化した内容であり、患者さんへのご案内が目的でした。しかし1つのテーマだけではマンネリ化は否めず、地域に何とか根付くことができた(有難いことに!)頃合いをみて断念いたしました。

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 ちょうど10年という区切りを経て、ほかのところ(整形〇〇会とか、〇〇医会・協会などなど)で書き貯めた原稿を少しずつ出してみようと思いたちました。昔のブログ名がクリニック+集うカフェ という意味で「クリニカフェ」だったので、今回は「Clinicafe ♯2」としました。あれこれ考えた結果、誰が書いているか何となく想像できる名前、ということで落ち着いた次第です。

 では、♯2は何なの?これは長くなるのでまた別の機会に。まずは、とある広報紙への投稿をスタートのご挨拶にいたします。どうぞよろしくお願い申しあげます!

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 糖尿病治療薬のメトホルミンが、2016年に世界初のアンチエイジング薬としての治験に入るとのニュースが流れた。120歳まで健康に生きられ、また加齢しにくくなることで他の諸疾患の進行を遅らせる効果も期待できるという。

 骨や筋肉にはアンチエイジング効果が望めそうだが、細胞に乏しい関節軟骨の変性は止められなさそうだとつい整形外科の視点で考えてしまう。また、薬を服用して長寿になる人、自然経過を望み選択しない人、アルツハイマーにならぬよう家族は望むが本人は服用拒否、などいろいろ想定され、同じ地域や宗教の中でも意見が分かれそうだ。もっと想像を広げると、寿命が120歳で健康なのに定年65歳はおかしいとか、社員に薬を飲ませて労働してもらう特区ができたら?とか、こうなるともうSFの世界だ。

 ところで、2015年は「Back to the Future2」の年と言われたのをご存じだろうか。懐かしい映画であり、そこで主人公が1985年からタイムスリップするのが2015年だったのだ。主役を演じ一躍スターになったマイケル J フォックスだが、その後パーキンソン病を発症し研究財団を設立している。もし映画が現実なら、彼は未来にとんでメトホルミンを持ち帰って服用するのか、それとも浮き沈みの激しいハリウッドスターでなく社会活動家としての現在を選ぶのか‥‥

 前述の財団のホームページにマイケルがよせた言葉が印象的で、引用しご挨拶とさせて頂きます。The cures we want aren’t going to fall from the sky. We have to get ladders and climb up and get them.